カタヤマさんの頭の中

久しぶりの実名ブログです

「教育」は「ライフスタイル」なのか。「VERY」掲載記事の違和感を考える。

 

GW終盤の朝、ぼんやりニュースアプリを眺めていると、こんな記事が飛び込んできた。

 

veryweb.jp

 

未就学児2人を育てる我が家、当然子供の教育は重大関心事である。

 

しかしまあ、記事の内容がすごい。

・インタビュイーは幼少期から(おそらく親の仕事で)7ヶ国を転々

・高校大学時代はニューヨークで過ごし、リーマン・ブラザーズをはじめとする外資系金融機関出身

・現在は日本入試センターSAPIX代ゼミなどの運営会社)の国際教育事業本部長

・3児の母で双子の長男・長女はそれぞれアメリカンスクールと日本の公立校に通っている

・将来は子供たちをアメリカの大学に進学させることを考えている

 

もう、これだけの情報量でクラクラとめまいがする。

 

そして、情報提供元を見てさらに驚いた。

「VERY」とあるじゃないか!

おしゃれママの教科書と言っても過言ではないVERY! かく言う私も上の子の妊娠中に何冊か買ったことがある。「子供が生まれたらこんなおしゃれなお母さんになるんだ!」とね。

 

しかし、ですよ。

もう、求められているレベルが高すぎる。

ファッションもさることながら、メイク、料理、インテリア、そしてもちろん子育て……。

しかもそれを、「いやいや全然頑張ってませんよ。肩肘張らず、手を抜いてやってるんですよ」というスマートさ(あざとさ)。

「お母さんって大変なんだな」とクラクラしてしまい、それ以来読むのをやめた。

 

まあでも、おしゃれなママの憧れの雑誌ということで、一定の距離を置きつつ気に留めてはいた雑誌である。

 

が。

なんだか今回の記事には酷く驚いてしまった。

もちろん、「ママ」がターゲットの雑誌なので、子育てが重要な関心事であることは間違いない。

しかし、「中学受験準備の低年齢化」とか「世界のトップ大学を目指す?」みたいなのってVERYの守備範囲なんでしたっけ?

なんだか心がざわざわする。

 

そもそもSAPIXといえば、受験クラスに入るために低学年からの「入塾待ち」、塾が終わる時間帯では保護者が塾の前に集まる「サピ出待ち」、「御三家に入るには入塾試験突破が必須」など、本当か嘘かわからない噂も多く出回る首都圏在住者の間では有名な、中学受験塾の超名門である。

そのSAPIXの部長の煽り要素満点の記事を載せてくるなんて、VERYは一体どうしてしまったんだ!

 

地方の公立高校出身の私としては、首都圏の恵まれた教育環境は素晴らしいと思う。

親であれば、子供にいい教育を受けさせたい、いい大学に進ませたい、いい職業に就いてもらいたいと願うのは当たり前である。

 

だけど、それは「ママのライフスタイル」の括りとして捉えていいものなのだろうか。

中学にしろ高校にしろ大学にしろ、受験をする当事者は子供であって、親はサポート役にすぎない。

ママの素敵なライフスタイルを実現するために、子供の進学先まで提案してくるというのは、あまりにも乱暴なのではないか。

 

----------

ちょっと話はズレるが、せっかくなのでもう少し受験の話を続けたい。

 

最近話題の「二月の勝者」という漫画がある。

(日テレ系列でドラマ化が決定しているが、コロナ禍で子役を集めての撮影ができないため、放映が延期になっているらしい)

これは、中学受験塾を舞台にした塾講師、子供、その親たちの物語だ。

 

二月の勝者 ―絶対合格の教室―(1) (ビッグコミックス)

 

ここで描き出される親子たちの姿は悲壮である。

受験をきっかけに夫婦関係に亀裂が入る親、「ブランド校の制服しか着せたくない」と高望みな志望校を押し付ける親、「名門校に入れ」という親からのプレッシャーに潰されそうになる子供、無理して名門校に入ったものの進学後に成績が底辺まで落ちてしまい不登校になる子供……。

 

公立中学→公立高校→大学というルートしかほぼなかった私としては、中高一貫教育を受けられるのは素直に羨ましい(大学受験を見据えると高2までに高校の学習範囲を終わらせて高3は受験対策に専念するというのは理にかなっている)。

高校数学で躓いた身としては、中3〜高2までの3年間でゆっくり数学を勉強できたらだいぶ違った、という思いはいまだにある。

 

でも、親の理想のために子供に過大な努力をさせるというのはやはり違うと思う。

ましてや、精神的にも肉体的にも未熟な小学生に。

 

そして、大学受験という出口を考えれば、超名門校に行かなくても有名大学に進学することはもちろんできる。なぜなら、中学の募集定員より大学の募集定員の方が多いからだ。

(例えば、すごく乱暴だけれど、男女御三家の定員の合計は約1500人(年度によって変動)、2021年度の東京大学の定員は3,060人である。もちろん、全員が東大を目指すわけではないし、他の高校から東大に入学する人も大勢いる。)

 

「二月の勝者」の描写の中で一番堪えたのは、親からのプレッシャーで実力を超える名門校に入った少年が、入学後勉強についていけず「深海魚」(授業についていけず沈んだまま浮上できない成績の生徒のこと)になってしまう、という箇所である。

田舎の公立高校出身の私でさえ、「高校に入って大きく成績が落ちる」というのは経験したことがある。公立といえど、受験を経て似たような学力の子供たちが集まってくるのだから、それは一定程度自然なことだ、と今は思う。

けれど、中学では無双状態だった成績が、高校でガクンと落ち込み、時には赤点で補習の呼び出しをくらったりなどすれば、精神的にはやはり堪える。やさぐれながら「私数学苦手だからー」と毒付きたくもなる。

でもそれが全教科だったら? 1年間ずっとだったら? しかも中学生だったら……?

 

親のプライドや意地で、15歳にも満たない子供にそんな思いをさせてはいけない、と思う。

 

そんなわけで、「子供によりよい教育を受けさせたい」という気持ちは重々理解した上で、それを「ママのライフスタイル」として取り扱うのは乱暴すぎやしないか、と思うのである。

というか、正直にいえば怒りすら覚える。

 

しかも、自分が中学受験や留学を経験してメリットもデメリットも身をもって理解している、というママならそれでもなお子供に茨の道を歩ませるという選択をすることは理解できる。

でも、自分が経験してもいない受験や留学を子供に強いるというのはどうなんだろうね。

おしゃれママの代表誌でそれをやってしまったら、焚きつけたり煽ったりすることに繋がりはしないだろうか。

そういうのはプレジデントファミリーとかで真っ向から取り上げればいい話なんじゃないかな。

 

会社の女性上司がこんなことを言っていたのが印象に残っている。

「私たちみたいなタイプ(※)はさ、専業主婦をやっていると子供の教育に熱を入れすぎてしまって、それが子供に過剰なプレッシャーになってしまうことがあると思うんだよね。

 だから、仕事して『子供の教育にたっぷり時間を注ぐ余裕はありません』っていうくらいの方が、子供にとってもいいんだよ」

 

さもありなん、である。

 

(※エネルギーの有り余っているタイプ、という意味だと捉えた。頑張りたくないけど土壇場になると髪の毛を振り乱しつつ頑張ってしまうタイプということ)

 

 

次回、「『VERY NAVY』だと…?」に続く!(かもしれない)