アイデンティティを取り戻す
さて。
先週から次女の慣らし保育が始まりました。
初日、2日目は2時間。
次はお昼まで食べて3時間ちょっと。
その次の日はちょっと頑張っておやつを食べて。
そんな感じでちょっとずつ預け時間を伸ばしている途中です。
今週中、つまり明日にはフルタイム保育になります。
保育園が始まってみて改めて気付いたけれど、この一年間、いかに自分のために時間を使えていなかったか。
次女がいる時間は、たとえ寝ている時間であっても泣き声をあげないか気になっていたし、長女が帰ってくれば「おかあさん、牛乳!」「一緒に塗り絵しよう!」「次はレゴ!」の呼びかけに生返事をし(夕方には疲れ切っているので全力では応えてあげられない)、習い事のある日はお昼ご飯が終われば習い事と夕ご飯の準備であたふたし。
コロナで帰りが早くなったとはいえ、夫が帰る頃にはほぼ生ける屍と化しており、「掃除?なんだっけそれ」状態だった。
髪を切ったり整体に行ったりする時間はおろか、本を読んだり勉強したり文章を書いたりする時間もないので、週の後半になると無性にイライラして夕飯作りを放棄したりしていた。
「今日はご飯を作りたくないので男気のお刺身だけご飯じゃ!」
という具合に。
そんな日々が慣らし保育の開始をもってようやく終わり、日中集中してジムでトレーニングしたり、勉強したり、ちょっと手の込んだ煮込み料理を仕込んだりできている。
そして何よりも、「あ、私もうすぐ働くんですよ!」と朗らかに答えられるようになった。
私は20代半ばで母の看病のため自己都合退職し、その後資格浪人を経験している。
母の死後で大変だったこともあるけれど、単純に能力の問題もあって、この浪人期間は結構苦労して、「周りのみんなは脂が乗って働いている時期に、私は何をしているんだ……」とアイデンティティクライシスに陥ったりもした。
その時に、無職であることの猛烈な恐怖に苛まれ、何があってももう仕事は辞めない、と固く誓った。
別に、今の仕事に特別適性があるとか、すごく優秀だとかいうわけでは一切なく、どちらかというと2回にも及ぶ妊娠出産育休のせいで同期に比べて大幅に遅れをとっていたりするわけなのだけど、それでも「いつかはまた一人の人間としてきちんと働く」ということを自分のプライドにしている。
(でも、今の業界に止まることはあまり考えていない。それについてはまた追い追い)
長女の時は、12月産まれということもあって、復職は長女が1歳の4月だった。
が、1歳をすぎると中には復職するママたちも周りに出てくる。
近い時期に出産した友人は子供が1歳になることに復職し、子育て広場で出会ったママさんも「保育園入れないと困るから、1歳になる前には復職する」と言う人がいたりで、そんな話を聞くたび、私の心はさとうきび畑……いや、ざわついた。
それに、当時は現在のようなコロナ禍ではなく、子育て交流会みたいなものがそこかしこで行われており、いわゆるママ友作りが苦手な自分がもどかしくてたまらなかった。
子育て広場や児童館に行っても、何を話していいか分からなくて硬直してしまうし、気を使いすぎて帰宅後ぱたりと寝てしまうこともよくあった。
たくさんママ友がいて、毎日子供を遊びに連れて行き、にこやかにみんなでランチやお茶をするのが素敵なお母さん、という誰が作ったんだかわからないステレオタイプに囚われて毎日疲弊していた。
ママ友を作る、他人と過ごす、ということは、毎日それなりにきれいな格好でいるということでもあるので、私服がダサい(参照:Instagramのプロフィール)の私としては、誰が見るわけでもないのに毎日出かける前に鏡の前であーだこーだし、なぜ私のクローゼットにはいい感じに見える服がないのだと絶望したりしていた。
(弁解しておくと、仕事に行くための服はちゃんとあるのだが、余暇に何をきていいか本当にわからないのだ。だって、家で育児家事をするためなら、油がはねても鼻水をつけられても気にならないジャージが一番快適なんだもの。)
結局、仕事のパフォーマンスの良し悪しはさておき、仕事をしていないと見事に、「自分が誰なのか」がわからなくなってしまうのだ。
仕事をしていれば辛いことももちろんあるし、「辞めてやる!」と思うことも比較的頻繁にある。
でも、この場合の「辞める」は「『この会社を』辞める」、であり、「その代わり、他の会社で働く」である。
どこかの会社に所属し、または何かの仕事に従事し、「私は/私の会社は、あなたにこういう価値を提供する存在ですよ」と言えることの安心感は計り知れない。
復職までのスケジュールが明確になった今、もちろん「復職めんどくさい、もっとダラダラしたい」という気持ちはあるものの、自分がどこの誰なのか不明瞭である状態から解放される安心感がある。
○○さんの奥さん、〇〇ちゃんのお母さん、ではない、自分。
自分の名前で仕事をし、自分の名前で上司に叱られ、自分の名前でお客さんから感謝されたりクレームを入れられたりする。
でもそうやって、金銭的なものも含めて誰かから評価されていないと、自分に自信のない私はちゃんと立っていられないのだ。
そんなわけで、徐々にアイデンティティを取り戻しつつある今日この頃。
まだ復職までのロスタイムはあるので、今までできなかったやりたいことをやってやってやり切って、復職の日を迎えたいと思います。